認知機能

就労移行支援の最大のポイントは「できない」を理解しよう!!

投稿日:

 

巷でうわさになっているこの本ご存知ですか?

新聞や雑誌、電車の広告などで目にされた方も多いかと思います。


 

※Google検索結果:ケーキが切れない非行少年たち

 

 

この本には、少年院に入所している子供たちの多くに認知機能の低下が隠れていたという内容が書かれています。

 

この本に登場する子供たちは自分の認知機能の低下に気づかれず、理解されず一生懸命生きてきたわけです。

 

 

 

非行は悪いことかもしれませんが、「できない」ことへの理解が少しでもあれば、非行という形ではない解決方法を見いだせたかもしれません。

 

精神科診療現場や、サポート現場でも同じことが言えます。

 

 

 

「できない」ことを、本人が怠けている、努力したがらない、やる気がないと片付けていませんか?

 

支援には「できない」ことへの理解がとても大切です。

勤務病院にて就労移行に携わっている方々にむけた支援のための講演をおこなったのでご紹介します。 

 

 

目次

 

認知機能に着目した支援

日常の現場では、実はこんなことが起こっています。

 

 

だから、この様にやってください。(この患者さん、どうしても言っている事がわかってもらえないなぁ…)

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看護師さん

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患者さん

はぁ…(早口で話されるとわからないんだけど…)

あー、Aさん、また同じ失敗している(言ってもわからないから、先生(医師)にお願いしよう)

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看護師さん

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患者さん

(気が散っていた)むずかしい・・・

 

支援する側は、患者さんの( )の部分は見えていません。

 

実は、本人も自覚していないこともよくあります。

 

 

その時の悔しかったり恥ずかしかったりした感情だけが記憶されてしまっていることの方が多いかもしれません。

 

支援する側は、患者さんの反応や行動だけでだめだと決めつけては、本当の理解にそった支援ができません。

 

患者さんの吹き出しの中の( )は認知機能の低下の部分です。

 

できない理由が認知機能の低下の場合、たとえ叱ったり指示したりしてもうまくできないことがあります。

 

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認知機能が使われている生活場面・就労場面

では、認知機能とはなにか?

ずばり、脳の基礎システムです。

以前、機械の部品にあたるようなものと説明しました。

 

 

機械の部品が壊れていれば機械がうまく動かないように、私たちの脳も認知機能が壊れているとうまく働きません。

 

 

認知機能とは、具体的に言うと注意力、記憶力、処理能力などを指します。

また、考えて行動するための「考えて」の部分も遂行機能という認知機能にあたります。

認知機能については神経認知機能で詳しく説明しています。

 

たとえば、生活場面ではこんなところに認知機能が働いています。

 

 

こちらは、就労支援機関に通所している患者さんのつぶやきです。

 

このつぶやきの問題の中にもいろいろな認知機能の低下が影響しています。

 

 

しかし、観察できるのは本人の行動のみであり、つぶやきの部分は脳の中の部分で外からはわかりません。

しかし、つぶやきの部分を理解しないと、できるにはつながりません。

 

 

 

次の図をみてください。就労支援機関でよく観察される患者さんの行動です。

 

日常生活で見られる行動特性のうち、怒りっぽい、疲れやすい以外は、すべて認知機能の低下が原因です。

 

身近な行動は、認知機能の低下が原因でおこっていることが多くあります。

 

認知機能の低下によってうまくいってないのではないか?という視点をもって支援をおこなっていかなければ、目の前の利用者さんの本当の支援につながりません。

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homareko

「だめだ」と決めつけるのではなく、理解から支援を始めましょう!

 

 

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患者さんの「できない」を理解する

 

この報告は、就労支援の現場で認知機能向上に取り組んだ結果、収入まで上がったという研究結果です。

 

患者さんの「できない」を悩むだけではなく、理解することから始めましょう。

前にすすむことで、新しい希望が見えてきます。

 

 

 

では、「できない」を理解するためのポイントをお話しします。

 

 

①できないことへの反応に惑わされない

私たちが見えているのは、「できない」ことに対する患者さんの「反応」や「行動」です。

まず、なにが「できない」のかを見極めることです。「できない」事柄に注目するようにしましょう。

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homareko

できないことへの反応が問題行動だったりするとそちらに注目しがちになってしまうので注意してください。

 

 

②「できない」理由を3つの中から考えてみる

次に、「できない」理由を見極めましょう。

出来ない理由の主な3つ

認知機能(注意、記憶、処理、考える力など)の問題なのか?  

認知(とらえ方)の問題なのか?  

病状(幻覚・妄想・気分)の問題なのか?

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例1

「周囲がみてないと気がそれてしまう」 「単純な指示を理解するのに何度も説明を要する」

この場合は認知機能の低下が疑われます。

神経認知機能低下へのアプローチが必要です。治療でいうと、認知機能リハビリになります。

低下している認知機能をどのように使っていくかの支援が必要です。

 

 

 

 

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例2

「私は失敗しそうな場面にばかり注意を向けがちだ」 「いつも上司の顔は怒っているように見える」

この場合は、社会認知機能の低下が疑われます。自分の考えや行動へのアプローチが必要です。

 

治療では、メタ認知療法や社会認知機能リハビリが有効です。

考え方のクセに気づいていけるようなサポートが必要です。

 

 

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例3

「上司と話そうとすると声が震えるのではないかと心配になる」 「声が震えるなんて社会人として不適切だと考えてしまう」

この場合は、その人のとらえ方、認知の問題があります。

かたよった認知へのアプローチが必要です。

認知行動療法の対象です。

 

 

 

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例4

「夜になると音がうるさくて眠れません」 「テレパシーが邪魔をします」

この場合は、病状が問題です。主治医と相談しましょう。

当事者にとってキャパオーバーであり精神症状が悪化した状態です。服薬調整等が必要かもしれません。

 

 

 

③認知機能が低下している場合 何の機能が低下しているか見定めましょう。

低下している機能に対しての攻略を支援していくことが成功につながっていきます。

 

④第一印象で決めつけない

多くの方の視点から情報や証拠、事実を集め判断してください。

情報は「事実」と「事実から考えたこと」を分けて判断するようにしましょう。

情報は、事実ではなくスタッフが考えた結論で対応が決めつけられてしまうことが多いのでカンファレンスなどでは特に注意が必要です。

 

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認知機能へのアプローチ

特に就労継続と関与している認知機能はイラストにあるものです。

これらの認知機能は、就労移行へのバロメーターにもなります。

認知機能の低下には、ふたつのアプローチがあります。

 

ふたつのアプローチ

① リハビリで認知機能を向上させる。

② 低下した認知機能を自覚させ、うまく工夫する。

 

です。これらをもう少し細かく見ていくと

 

① リハビリで認知機能を向上させる。

まず一つ目のアプローチは、衰えた認知期機能をきたえることです。

認知機能のリハビリは大きくふたつあり、神経認知機能リハビリと社会認知機能リハビリがあります。

 

おもに精神科病院やデイケアで行われています。 就労移行と認知機能リハビリを並行するとよい方は次のような方です。

参考記事:認知機能リハビリ説明編

 

 

 

② 低下した認知機能を自覚させ、うまく工夫する。

もう一つのアプローチは、うまく働かない認知機能には、いろいろな工夫で補うことができます。

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homareko

記憶力に自信がなく手帳やメモを使うのは、一つの工夫ですね。

こうして認知機能低下に対応していけば、課題をこなすことは可能となります。

これには、本人の自覚と協力が必要です。

 

 

 

ここで大切なのは、本人がこのような工夫を取り組んだ方がいいなと気づき、継続してその工夫が取り組めること、いろいろな生活場面で応用していけることです。

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homareko

本人が必要性に気づいていける促しがいいですね。

 

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就労移行のポイント

就労に必要な要素をまとめると次のとおりです。

就労移行へのポイントは、

就労移行へのポイント

・生活リズムが就労により崩れない

・体力が続く

・対人コミュニケーションが良好、SOSが出せる

・家族協力・周囲理解がある

・作業能力が身につく

 

です。これらは脳の基礎機能である認知機能で支えられています。

認知機能に着目し、認知機能に対する攻略に基づいた支援に取り組んでいくと、当事者のリカバリーにつながることになります。

 

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今日のポイント

・支援のポイントは「できない」ことへの理解から

・「できない」ときの本人の反応や問題行動への対処で満足するな

・「できない」理由は、認知機能低下の可能性あり→認知機能への対応を

・「できない」理由は、かたよった認知の問題あり→認知行動療法を検討を

・「できない」理由は、病状の悪化である→主治医に相談を

・認知機能に着目した支援ができるようになろう

 

医療者は、リスクを考えがちです。

そして、リスクがあると、チャレンジをさせることを怖がる傾向があります。

 

 

無理だと決めつけるのではなく、認知機能の低下へ着目しながら前に進んでいってほしいと思います。

 

 

リハビリによって向上した認知機能で生き生きと生活している患者さんをみると、どんな方にも認知機能へのアプローチは大切であることを実感しています。

就労支援施設において、支援やサポートのお役にたてたら幸いです。

ご質問ご要望お待ちしています<(_ _)>

 

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